クリック数やコンバージョン数では、広告の効果をすべて説明できません。認知を広げることが目的の施策では、成果が数字に表れるまでに時間がかかるためです。
その空白を埋めるのがブランドリフト調査です。広告に接触した人と接触していない人に同じ質問を投げ、回答の差を広告の効果として捉えます。心理的な変化を数値化できる点が、従来の指標との決定的な違いです。
本記事では、この調査で測定できる指標、リフトを算出する仕組み、媒体機能と調査会社という2つの実施方法、そして結果を読むときの注意点までを整理します。
| 確認したいポイント | 結論 | 詳細 |
|---|---|---|
| どんな調査? | 広告による態度変容を測る調査 | 接触群と非接触群の回答差を、広告の効果として算出します。 |
| 何が測れる? | 認知・想起・好意・購入意向 | クリックやCVでは把握できない、心理面の変化を数値化できます。 |
| どう算出する? | 2群の回答率の差がリフト | 接触群70%、非接触群50%なら20ポイントのリフトと表します。 |
| 実施方法は? | 媒体の機能か調査会社に依頼 | 媒体機能は低コスト、調査会社は媒体をまたいだ設計が可能です。 |
| 注意点は? | 売上への直接効果は測れない | 外的要因の影響も受けるため、参考値として扱う姿勢が必要です。 |
Contents
この記事でわかること
- ブランドリフト調査の仕組みと、比較の考え方
- 測定できる指標と、この調査では分からないこと
- リフトの算出方法と、統計的な有意性の考え方
- 媒体機能と調査会社、それぞれの実施方法の違い
- 結果をクリエイティブや予算配分の判断に活かす方法
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ブランドリフト調査とは?
ブランドリフト調査とは、広告に接触したユーザーと接触していないユーザーを比較し、ブランドに対する認知や態度がどれだけ変化したかを測る調査です。英語表記からBLSと略されることもあります。
広告を見た人だけにアンケートを取っても、もともとそのブランドを知っていたのか、広告によって知ったのかは区別できません。接触していない人という比較対象を置くことで、広告による増分だけを取り出せるようになります。
この考え方は、医薬品の臨床試験などで用いられる比較の設計と同じ発想です。条件を揃えた2つのグループを用意し、違いは広告に触れたかどうかだけという状態をつくることで、効果を切り分けます。
ランダムに2群へ分けて比較する
対象となるユーザーを無作為にテスト群(広告を表示するグループ)とコントロール群(表示しないグループ)に分け、両方に同じアンケートを配信します。
無作為に分けることで、年齢や興味関心といった条件が両群で均されます。その状態で回答に差が出れば、その差は広告接触によるものだと考えられる、という設計です。
コントロール群には、広告の代わりに別の内容が表示されるか、何も表示されません。いずれにせよ、対象のブランド広告には触れていない状態を保つことが条件になります。
逆に言えば、群の分け方に偏りがあると結果は信用できません。広告に興味を持ちそうな層だけをテスト群に集めれば、当然リフトは高く出ます。無作為であることが、この調査の前提条件です。
なぜ必要とされるのか
検討期間が長い商材や高単価商品では、広告接触から購入までに時間差が生じます。この間の効果をクリックやコンバージョンで測ろうとすると、認知施策は常に「成果が出ていない」と評価されてしまいます。
ECでも同じ構図が起こります。ラストクリックだけを評価すると、比較検討の段階で接触した広告の貢献は見えません。結果として、指名検索を刈り取る施策ばかりに予算が集中しがちです。
ブランドリフト調査は、短期の獲得指標では説明できない施策の価値を示す手段です。社内で予算を確保する際の根拠としても機能します。
特に、これまで接点のなかった層に届けたい場面では有効です。新規の顧客を増やしたいのに、既存顧客への刈り取り施策ばかりが評価される状態は、中長期で見れば成長を止める要因になります。
ブランドリフト調査では何が測れる?
測定できる指標は、購買までの心理段階に沿って整理できます。
| 指標 | 測る内容 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 広告想起 | 広告を見た記憶があるか | クリエイティブが記憶に残ったかを判断する |
| ブランド認知 | そのブランドを知っているか | 新規参入や新ブランド立ち上げ時の基礎指標 |
| 商品認知 | 特定の商品を知っているか | 新商品の告知施策の効果を測る |
| メッセージ想起 | 伝えたい内容が届いたか | 訴求内容が正しく伝わったかを確認する |
| 好意度 | そのブランドに好印象を持つか | ブランディング施策の中期的な評価に使う |
| 購入意向 | 買いたいと思うか | 購買に近い段階での効果を確認する |
どの指標を重視するかは、施策の目的で決まります。新ブランドなら認知、既に知られているブランドなら好意度や購入意向というように、伸ばしたい段階に合わせて選びます。
広告想起とブランド認知は混同されやすい指標です。前者は広告そのものを覚えているか、後者はブランドを知っているかを問うもので、広告は覚えていてもブランド名が残っていないという結果も起こり得ます。
検索行動の変化を測る手法もある
似た考え方の指標に、サーチリフトがあります。広告接触によって、ブランド名や商品名の検索数がどれだけ増えたかを測るものです。
アンケートで意識の変化を測るブランドリフトに対し、サーチリフトは実際の行動データで測ります。両方を見ると、意識の変化が行動につながっているかまで確認できます。
ECの場合、指名検索の増加はモール内での順位や自社サイトへの流入にも影響します。ブランド名で探してもらえる状態をつくれているかは、追う価値のある指標です。
この調査では分からないこと
売上への直接的な貢献は測れません。購入意向が上がったからといって、実際の購入が同じだけ増えるとは限らないためです。行動の増分を知りたい場合は、コンバージョンリフトという別の測定手法を使います。
また、価格改定、流通の変化、競合の動きといった外的要因の影響も受けます。調査期間中にこうした変化があった場合は、結果の解釈に注意が必要です。
つまり、この調査で得られるのは絶対的な答えではなく、判断のための材料です。数値をそのまま成果とせず、他の指標と併せて読むことが求められます。
リフトはどう算出する?
計算そのものは単純です。2つのグループの回答率の差を取ります。
差分がそのままリフトになる
たとえば広告想起について、テスト群の70%が「見た記憶がある」と回答し、コントロール群では50%だった場合、差は20ポイントです。この20ポイントが広告によるリフトとして報告されます。
この差を、もとの数値に対する比率として示す方法もあります。報告書を読む際は、ポイント差なのか変化率なのかを確認してください。同じ結果でも印象が大きく変わります。
たとえば5%から6%への変化は、ポイント差では1ポイントですが、変化率では20%の上昇です。どちらも間違いではありませんが、報告の際にどちらを使うかで受け取られ方は大きく変わります。
統計的に意味のある差かを確認する
差が出ていても、それが偶然の範囲かもしれません。そのため、一定の信頼水準のもとで、差が偶然ではないと言えるかを検証します。一般的には90%または95%の水準が用いられます。
サンプル数が不足していたり、効果そのものが小さかったりすると、有意な差として確認できないことがあります。ただしその場合でも、方向性を検討する材料としては使えます。
小さな差を過大に扱わない
数ポイントの差を根拠に、施策の成否を断定するのは危険です。サンプル数と信頼水準をセットで確認し、どこまで言えるのかを見極めたうえで社内に共有しましょう。
また、有意差が出なかったことは「効果がなかった」ことと同義ではありません。検出できる規模に達していなかっただけの可能性もあります。結論を急がず、条件を見直して再度測る判断もあり得ます。
実施方法にはどんな選択肢がある?
大きく2つの方法があります。予算と目的によって選びます。
| 項目 | 広告媒体の機能を使う | 調査会社に依頼する |
|---|---|---|
| 費用 | 無料で提供される場合が多い | 調査費用が別途発生する |
| 対象 | その媒体に接触したユーザー | 媒体を横断して設計できる |
| 設問 | 用意された形式が中心 | 自由に設計できる |
| 実施条件 | 一定以上の配信量や期間が必要 | 出稿規模の条件は緩やか |
| 向くケース | 単一媒体の施策を評価したい | 複数媒体を含めて全体を評価したい |
媒体の機能を使う場合
主要な広告プラットフォームには、ブランドリフトを測定する機能が用意されています。追加費用なしで利用できる場合が多い一方、利用にあたっては一定の配信量や実施期間、対象地域などの条件が設けられています(参考:Metaビジネスヘルプセンター「ブランドリフト調査について」)。
設問の形式もあらかじめ用意されたものが中心になります。自由度は下がりますが、標準化されているぶん、他のキャンペーンとの比較がしやすいという利点もあります。
なお、利用できる条件や測定できる指標は媒体ごとに異なり、仕様も更新されます。実施を検討する段階で、各媒体の最新のヘルプを確認しておきましょう。
調査会社に依頼する場合
媒体をまたいだ効果を測りたい場合や、独自の設問で聞きたい場合は、調査会社に依頼する方法があります。テレビや交通広告など、デジタル以外の接触も含めて設計できます。
自社の顧客像に近い層に絞って聞きたい場合も、この方法が向いています。媒体側の機能では、対象の条件を細かく指定できないことがあるためです。
この場合は、広告に接触したかどうかを回答者に確認する形で群を分けるのが一般的です。媒体機能のように配信ログで厳密に分けるわけではないため、設計の精度が結果を左右します。
費用は調査規模によって変わります。設問数と回収数で決まるネットリサーチの料金体系が基準になるため、事前に見積もりを取って比較しておきましょう。
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実施の流れはどう進む?
媒体機能を使う場合も、調査会社に依頼する場合も、大枠の流れは共通します。
STEP1:測定する指標を決める
施策の目的から、伸ばしたい指標を1つか2つに絞ります。すべての指標を測ろうとすると、設問が増えて回答率が下がります。何を判断したいのかを先に決めてください。
あわせて、どの水準に達したら成功とするのかも決めておきます。基準がないまま実施すると、結果が出てから解釈が分かれ、議論が収束しません。
STEP2:比較する条件を設計する
単純に広告の有無を比べるだけでなく、クリエイティブA案とB案を比較する、配信の頻度を変えて比べるといった設計も可能です。何と何を比べたいのかを明確にします。
比較する要素は1つに絞るのが原則です。クリエイティブとターゲティングを同時に変えると、どちらが効いたのかを切り分けられなくなります。
STEP3:必要な規模と期間を確保する
サンプル数が不足すると、差が出ても有意と判断できません。必要な配信量と実施期間を事前に確認し、途中で予算を絞らないよう計画を固めておきます。
期間中にクリエイティブや配信設定を大きく変えると、何が効いたのかが分からなくなります。測定期間中は条件を固定し、変更したい場合は次の測定に回すのが基本です。
STEP4:実施と結果の確認
配信中は、想定どおりに両群が分かれているか、回答が集まっているかを確認します。終了後は、指標ごとの差と有意性を確認し、次の施策に活かせる形へ整理します。
結果は、次の施策の設計に反映するところまでを一連の流れとします。測って終わりにすると、同じ疑問を次回もまた抱えることになります。
結果を読むときの注意点は?
数値の見せ方によって、印象は大きく変わります。誤読を避けるための観点を挙げます。
外的要因の影響を切り分ける
価格の変更、競合の大型キャンペーン、季節要因、報道など、広告以外の要素も態度に影響します。2群を無作為に分けることで多くは相殺されますが、期間中に何が起きていたかは記録しておきましょう。
自社で同時に別の施策を走らせている場合も注意が必要です。セールやテレビ露出と重なると、どの施策の効果なのかが判別しにくくなります。
意向と行動は別物として扱う
購入意向が上がったという結果は、購入が増えたことを意味しません。意向はあくまで気持ちの表明であり、実際の購買には価格や在庫、購入のしやすさといった別の要素が関わります。
指標の定義を社内で揃える
認知といっても、名前を聞いたことがある段階と、内容まで理解している段階では意味が違います。測っている指標が何を指すのかを共有しないまま数値だけを回すと、議論がかみ合いません。
設問文そのものを報告書に記載しておくと、後から見返したときにも解釈がぶれません。指標名だけでは、何を聞いたのかが伝わらないためです。
継続して測って初めて価値が出る
1回の結果だけでは、その数値が高いのか低いのかを判断できません。同じ設計で複数回実施し、施策ごとの差として比較することで、意味のある指標になります。
業種や商材によって出やすい数値の水準は異なります。他社の事例と単純に比べるより、自社の過去の施策と比較するほうが、判断材料として確かです。
結果をどう活かす?
測定して終わりでは意味がありません。次の意思決定につなげる使い方を整理します。
クリエイティブの良し悪しを数値で評価する
どの表現が想起されやすかったのかが分かれば、感覚ではなくデータでクリエイティブを選べるようになります。複数案を比較する設計にしておくと、次の制作にそのまま活かせます。
制作物の評価は、社内の好みで割れやすい領域です。第三者の反応として数値が出ていれば、議論の前提を揃えられます。
媒体と予算の配分を見直す
認知に効く媒体と、購買に近い層を刈り取る媒体では役割が異なります。リフトの結果を踏まえると、上流の施策にどれだけ配分すべきかを検討しやすくなります。
配分を決める際は、リフトの数値だけでなく、その媒体でかかった費用も合わせて見ます。同じリフトでも、投下した金額が違えば効率は変わります。
モール内の広告メニューも、目的によって使い分けが必要です。メニューごとの特性はYahoo!ショッピング広告の種類は?各広告の特徴や初心者向けの広告メニューを紹介で解説しています。
社内での説明材料にする
認知施策は、成果が見えにくいために予算が削られやすい領域です。数値で効果を示せれば、継続の判断がしやすくなります。経営層への報告資料としても機能します。
報告の際は、数値の意味と限界もあわせて伝えます。過大に見せると、次に結果が振るわなかったときに施策全体の信頼を失うことになります。
あわせて、次に何を検証するのかも示しておくと、単発の報告ではなく継続的な取り組みとして理解されやすくなります。
調査と運用をセットで設計する
効果測定は、広告運用の設計段階から組み込んでおくほうが精度が上がります。配信後に測ろうとしても、比較対象が用意できていないことが多いためです。広告運用の考え方はFORCE-Rの広告運用支援でご確認いただけます。
また、媒体の機能では測れない範囲は、独自のアンケート調査で補えます。調査の実施体制についてはFORCE-Rの調査アンケートサービスをご覧ください。
まとめ
ブランドリフト調査は、広告に接触した群と接触していない群を比較し、認知や好意度、購入意向の変化を測る調査です。クリックやコンバージョンでは評価できない、認知施策の価値を数値化できます。
測定できるのは、広告想起、ブランド認知、商品認知、メッセージ想起、好意度、購入意向といった心理面の指標です。一方で、売上への直接的な貢献は測れず、外的要因の影響も受けます。
実施方法は、広告媒体の機能を使う方法と、調査会社に依頼する方法の2つです。単一媒体の評価なら前者、媒体を横断した評価なら後者が適しています。1回の結果に一喜一憂せず、同じ設計で継続して測ることが、指標として機能させる前提になります。
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