「498円や3,980円のような中途半端な価格設定の商品が多いのはなぜ?」
「大幅な値引きはせずに売上を伸ばしたい」
「心理的に安く感じる値段設定の方法が知りたい」
EC事業の売上アップを目指すにあたって、上記のような疑問や悩みを抱えていないでしょうか。心理的アプローチを用いて値段を設定すると、商品はより購入されやすくなります。ただし扱う商品やサービスによっては、逆効果となる場合があるため注意が必要です。
本記事では、心理的に安く感じる値段設定の方法や、価格変更により業績を伸ばした成功事例を解説します。商品の値段設定に悩む方や売上を伸ばしたい企業の担当者さまは、ぜひ参考にしてください。
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Contents
498円のような中途半端な金額を「買いやすい値段」と感じる心理とは
498円のような中途半端な値段設定は、500円の境界を下回ることで実際の差額以上に安く感じさせる心理的アプローチです。消費者への心理的なはたらきかけにより大幅な値下げ購入を促せるため、利益を維持しつつ売上の拡大が期待できます。
このように「買いやすい値段」と感じさせる心理的アプローチは、中途半端な価格設定だけではありません。値段設定の心理的アプローチは複数あるため、以下のような要素を考慮し、適切な手法の選択が必要です。
- 商品のカテゴリー
- 商品展開
- 販路
- ブランドコンセプト
値段設定で消費者の購入を促進し、売上や利益の増加を目指しましょう。
買いやすい値段を設定する10の方法
消費者に「買いやすい値段」と感じさせるためには、数ある心理的アプローチの中から商品に適した手法の選択が重要です。自社で扱う商品やサービスと照らし合わせ、どの心理的アプローチが適しているかを判断してください。
1. 端数価格
きりの良い金額ではなく、あえて端数に値段を設定する心理的アプローチです。例えば1,000円ではなく980円、10,000円ではなく9,800円のように節目となる金額を下回るよう値段設定する手法で「大台割れの価格」とも呼ばれます。
端数価格の設定により、実際の差額以上のお得感を消費者に与え、購入意欲を引き上げることが可能です。端数価格は以下のような商品に用いられています。
- 食品
- 化粧品
- 日用品
- アパレル
- 家電
ただしブランド品や嗜好品では、端数価格による心理的効果が薄い点に注意してください。またアメリカのオハイオ州立大学の研究では、端数価格の設定により上位モデルの商品販売「アップセル」が妨げられると報告されています。端数価格の使用は、自社のブランドや商品展開を考慮し判断しましょう。
アップセルについては関連記事の「アップセルとクロスセルの意味や違いを解説!売上向上につながる3つのポイントや成功事例も紹介」にて詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
2. 段階価格
「松竹梅の法則」を利用した心理的アプローチで、値段を段階的に設定した商品を提示する手法です。最も売りたい商品を中間の価格に設定することで、顧客に選ばれやすくなります。低価格な商品で手に取りやすさを感じさせ、高価格な商品で品質を求める顧客層への訴求が可能です。
ただし、段階価格を設定する商品数は3〜4個に留めてください。商品数が2個のときは高い方が売れなくなり、選択肢が多いと1つに決めることを諦める「決定回避の法則」がはたらき、購入しない人が増えてしまうためです。美容サービスや料理のコース、機能や容量に差をつけた家電の値段設定は、段階価格を活用するのがおすすめです。
3. セット価格
単品より別商品とセットで購入した際の合計額を安くし、複数の商品購入を促して客単価アップをねらう値段の設定方法です。「バンドル販売」とも呼ばれ、以下のような商品をはじめとして幅広く活用されています。
- 食品
- 化粧品
- アパレル
セット価格は、EC事業の「クロスセル」で用いられる値段設定です。利益率の低い商品と高い商品のセットによる利益の確保や、同じ商品を複数個まとめることで販売数を増加させる効果が期待できます。ただし、セット内容や値段設定が消費者のニーズにそぐわない場合、単品で販売するより売上が下がるリスクがあるため注意が必要です。
4. 名声価格
値段を競合商品より高く設定し、高級感や品質のよさを訴求する心理的アプローチです。ブランド品や希少なアイテムに使用される手法で、購入者に優越感を与える効果があります。自社のイメージアップとともに利益率の向上が見込める、企業にとって魅力的な手法です。
名声価格は、以下のような商品の値段設定に活用されています。
- 美容家電の高級ライン
- 数量や期間限定モデル
- 有名人とのコラボアイテム
名声価格を設定する商品には独自性が必要で、開発コストが上がりやすい点に注意しましょう。また商品のターゲット層によっては安さを重視しており、価格を上げると購入されにくくなるケースがあるため、入念な市場調査が重要です。
FORCE-Rでは「定量×定性」の分析を用いた市場調査により、商品やターゲット層に応じた値段設定を提案できます。自社で扱う商品の値段設定でお悩みの担当者さまは、お気軽にFORCE-Rへお問い合わせください。
5. 均一価格
安価な価格に統一し、値段の計算にかかる負担を抑えることで、複数の商品購入を促す心理的アプローチです。「ジャストプライス価格」とも呼ばれ「100円」「500円」「1,000円」のような、きりの良い金額に設定します。
均一価格が使われている事例は、以下のとおりです。
- 100円ショップ
- 回転寿司
- お祭りの屋台料理
ただし価格の維持が難しくなって値上げすると、顧客が一気に離れてしまう可能性があります。また統一された価格のため、全体の売上からは商品ごとの販売状況が把握しづらい点に注意が必要です。
6. 慣習価格
長期にわたり維持されており、消費者の意識に定着した価格です。慣習価格の活用例としては、以下のような商品が挙げられます。
- 自動販売機の缶ジュース
- タバコ
- もやし
- コンビニのおにぎり
慣習価格の商品は値上げすると売上が減少しますが、値下げしても購入を促す効果はほとんどありません。自社商品の値段を設定する際は「類似品で定着している慣習価格がないか」を事前に調査しましょう。慣習価格が定着している場合、商品の内容量やサイズを調整して相場と近づける施策を行います。
7. プライスライニング
商品を価格ごとにランク分けすることで、予算に応じたアイテムを選びやすくする手法です。複数の商品を展開することで、全体を通しての売上アップが期待できます。例えばギフトセットの「3,000円」「5,000円」「10,000円」のような商品展開は、プライスライニングの代表的な一例です。
競合商品が自社より安い場合は価格を下げて対抗するのではなく、容量やサイズを調整した安価なモデルを新たに展開しましょう。安価なモデルで試しやすさやお得感を訴求し、通常商品へのアップセルにつなげることで、新たな顧客層を獲得できます。
ただし、費用相場が分かりづらい商品をランク分けすると、顧客はそれぞれの違いを比較できない場合があるため注意が必要です。
8. 割引表示
割引率や値引き価格を表示し、安さを強調することで購入を促す施策です。ブランド品は「◯%オフ」のような割引率を、それ以外の商品は「◯円引」のような値引き額を表示すると購入されやすいです。定価と割引後の価格を、2つ並べて見せる手法も効果があります。
ただし割引率が低すぎると消費者はお得に感じにくく、逆に値引きが大きすぎると品質に不安を感じ買い控えることがあります。また割引価格の表示方法や期間によっては、景品表示法の「有利誤認」や「二重価格表示」に抵触するケースがあるので注意しましょう。
9. アンカリング効果
最初に大きな金額を提示して印象づけ、続けて見せる値段を安く感じさせる心理的アプローチです。船がいかり(アンカー)を下ろすことになぞらえ、最初に提示した事柄がその後も判断基準として用いられる現象を指します。
通常価格を提示した後に「特別価格」や「初回限定価格」を示す方法が代表例で、幅広い商品に用いられる手法です。セール価格の表示方法や期間によっては、前述のように罰せられるケースがあるため注意してください。
10. フレーミング効果
表現方法を変え、同じ金額でも消費者に与える値段の印象を操作する手法です。例えば月額サービスや高額商品は、金額を日数で割り「1日あたり◯円」と訴求すると、購入のハードルを下げられます。そのほかに「2つ購入で半額」より「2つ購入で1つ無料」の方がお得に感じるのは、フレーミング効果による影響です。
ただし過度に強調した表現を用いると、ブランドの信頼性を失うことがあります。また訴求のフレーズによっては、景品表示法の「優良誤認」に抵触するリスクがあるため注意しましょう。
買いやすい値段設定を行った3つの成功事例
これまでに数々の企業が、消費者に「買いやすい値段」と感じさせる心理的アプローチを用いて自社の業績を伸ばしています。3つの事例から成功の秘訣を読み取り、自社での戦略に取り入れて売上アップを目指しましょう。
1. 段階価格の設定で売上78%増加【オリジン弁当】
オリジン弁当は2012年、1種類だった幕の内弁当を「並450円」「上490円」「特上690円」の3種類展開に変更しました。その結果、中間の「上490円」が最も売れ、幕の内弁当全体の売上は前年比の78%増加したのです。
この事例では、フレーミング効果も活用されています。通常であれば中間の商品は「並」と名づけられるところ、オリジン弁当では「上」にすることで高級感をアピールすることに成功しました。
2. 1円の値上げで客単価18.5%増加【サイゼリヤ】
サイゼリヤは商品に端数価格を設定していましたが、2020年7月に1円値上げし50円刻みの価格に改定しました。ミラノ風ドリアは299円から300円、シーフードパエリアは599円から600円と、均一価格に設定されています。その結果、値上げ前後の2019年8月期と2023年8月期の決算報告を比較すると、客単価は18.5%アップしていました。
価格改定で小銭のお釣りを減らし、さらにキャッシュレス決済の導入で会計にかかる時間を短縮したことで、売上アップと業務の効率化を実現しています。
3. セット販売で利益5倍【任天堂】
2020年3月、任天堂は「Nintendo Switch あつまれ どうぶつの森セット」を発売しました。セット内容は以下の4点で39,556円と、単品購入より約20%値下げされたパッケージです。
- Nintendo Switch本体
- あつまれ どうぶつの森 ダウンロード版ソフト
- Joy-Con
- キャリングケース
発売からわずか6週間でシリーズ前作までの生涯累計販売数を更新し、1341万本が売れました。発売から半年後に発表された決算では「売上高2倍」「営業利益5倍」と大幅な業績アップを記録しています。セット販売により、これまでNintendo Switch本体を持っていなかった新規顧客を取り込んだことが、業績アップの要因として挙げられます。
参照:任天堂|2021年3月期第1四半期 決算説明
売上を向上させる施策については関連記事の「【保存版】ECサイトの売上をアップさせる施策10選!成功事例も紹介」にて詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
適切な値段設定に迷ったらFORCE-R
売上アップにつながる値段設定にお悩みの方は、ぜひFORCE-Rへご相談ください。弊社では「定量×定性」による分析をもとに、消費者目線で買いやすい値段をアドバイスいたします。
またFORCE-Rでは専門コンサルタントによる「サイト設計」から「施策の提案」に至るまで、総合的なサポートが可能です。値段設定にともなうリサーチに限らず、ECサイト運用のリソース不足を感じている企業の担当者さまは、まずはお気軽にお問い合わせください。
まとめ|消費者が買いやすい値段を設定するためには事前リサーチが重要
心理的アプローチを用いた値段設定は、商品の売上や利益の向上につながる重要な施策の1つです。消費者の購入意欲を高めるためには、商品やブランドごとの適切な値段設定だけでなく、競合商品や顧客ニーズの調査も欠かせません。
ECサイトの売上を伸ばしたい企業の担当者さまは、ぜひFORCE-Rへご相談ください。実績のあるコンサルタントが課題のヒアリングを行い、売上の拡大を全力でサポートいたします。