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コホート分析とは?ECのリピート率を可視化する方法をわかりやすく解説

「リピート率が30%」という数字を聞いても、それが改善しているのか悪化しているのかは判断できません。全体平均は、新規と既存が混ざった状態を平らにならした値だからです。

この問題を解決するのがコホート分析です。同じ時期に購入し始めた顧客をひとまとまりとして追うことで、時間の経過とともにどれだけ残っているかが見えるようになります。

本記事では、コホート分析の考え方を整理したうえで、ECで作成する手順、表の読み解き方、陥りやすい失敗、そして結果を施策に活かす方法までを解説します。

確認したいポイント結論詳細
どんな分析?同じ条件の集団を時系列で追う購入開始の時期などで顧客を分け、その後の推移を見ます。
何が分かる?施策の効果とリピートの実態全体平均では見えない、層ごとの変化を捉えられます。
どう作る?区切りと期間を決めて表にする購入月ごとに顧客を並べ、経過月ごとの再購入率を出します。
どう読む?横・縦・斜めの3方向で見る時間経過、集団間の比較、外部要因の影響を切り分けます。
注意点は?件数が少ないと判断できない1つの区分に十分な人数がなければ、偶然の変動になります。

この記事でわかること

  • コホート分析の考え方と、全体平均との違い
  • ECで分かること(リピート率、施策効果、チャネルの質)
  • 分析表を作成する5つの手順
  • 横・縦・斜めの3方向による読み解き方
  • 陥りやすい失敗と、結果を施策に落とす方法
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コホート分析とは?

コホート分析とは、同じ条件を持つ集団を、時間の経過に沿って追跡する分析手法です。コホートとは、共通の特性を持つ集団を指す言葉で、もともとは人口統計の分野で使われてきました。

ECにおいては、同じ月に初めて購入した顧客をひとつの集団として扱い、その後の購買行動を追うという使い方が中心になります。

似た言葉にRFM分析がありますが、こちらは現時点での顧客をランク分けする手法です。時間の経過を追うコホート分析とは、目的が異なります。

国の統計でも、出生年ごとの集団を追って変化を見る手法が用いられています(参考:総務省統計局)。この考え方を、顧客の購買行動に応用したものがマーケティングにおけるコホート分析です。

全体平均では見えないもの

ECのリピート率を全体で見ると、その月に購入した顧客すべてが対象になります。新規獲得が増えた月はリピート率が下がり、減った月は上がるという、実態とは逆の動きをすることもあります。

広告を強化した月ほどリピート率が悪化して見えるのは、この構造によるものです。施策が失敗したと誤解して、有効だった打ち手を止めてしまうことにもなりかねません。

コホートに分けると、この混ざり合いを取り除けるのが最大の利点です。1月に初回購入した顧客が、2月、3月とどれだけ再購入しているかを追えば、新規獲得の増減に影響されない数値が得られます。

よく使われる区切り方

区切りの基準内容分かること
初回購入月最初に購入した月で分けるリピート率の推移、施策の効果
流入チャネル広告、検索、SNSなど獲得経路ごとの顧客の質
初回購入商品最初に買った商品で分ける入口となる商品の違い
初回購入金額購入額の帯で分ける単価とその後の継続の関係
会員登録時期登録した時期で分ける施策変更前後の比較

ECで最も基本になるのが初回購入月による区切りです。まずここから始め、必要に応じて他の軸を試すのが現実的な進め方になります。

区切りを変えることで、同じデータから別の示唆が得られます。分析の目的に応じて、どの軸で切るかを決めましょう。

ECでは何が分かる?

コホート分析から読み取れることを整理します。

リピート率の実際の姿

初回購入から1か月後、3か月後、6か月後にどれだけ残っているかが分かります。多くのECでは、初回から2回目への移行が最大の壁になります。

初回購入者の大半が、そのまま戻ってこないという状態は珍しくありません。この現実を数値として把握することが、改善の出発点になります。

この2回目への転換を超えた顧客は、その後の継続率が大きく上がる傾向があります。どの時点で離脱が集中しているかを把握できれば、働きかけるタイミングも定まります。

逆に言えば、初回購入者への接触を怠っている状態では、いくら新規を集めても積み上がりません。獲得コストが上がり続けるなかで、この構造は経営上の課題になります。

施策の効果検証

新しい同梱物を入れた月、フォローメールの設計を変えた月というように、施策を実施した前後のコホートを比べれば、効果が確認できます。

施策の実施時期を記録しておくことが前提です。後から振り返ろうとしても、いつ何を変えたのかが分からなければ比較できません。

全体の売上だけを見ていると、季節要因や新規獲得数の変化に埋もれて判断できません。コホート単位で比較することで、施策そのものの影響を切り分けられます。

効果が出るまでに時間がかかる施策ほど、この見方が必要になります。実施した月の売上だけでは、判断できないためです。

集客チャネルごとの顧客の質

広告経由と検索経由では、獲得後の行動が異なります。獲得単価が安くてもその後まったくリピートしないチャネルであれば、実質的なコストは高いことになります。

この視点があると、広告予算の配分判断が変わります。初回の獲得単価だけでなく、一定期間後に残っている人数まで含めて評価できるようになります。

割引を前面に出した集客は、初回の獲得効率が良く見える一方で、継続率が低いことがあります。数字の見え方と実態がずれやすい領域です。

指名検索から入った顧客と、値引きに反応して入った顧客では、その後の関係の築き方も変わります。同じ1件の獲得でも、価値は同じではありません。

商品ごとの入口としての価値

初回に購入された商品ごとに分けると、その後の継続に差があることが分かります。継続率の高い商品を入口として設計すれば、同じ広告費でも成果が変わります。

売れ筋の商品が、必ずしも良い入口とは限りません。単発で終わりやすい商品と、次につながる商品を見分けられる点に価値があります。

コホート分析はどう作る?

専用のツールがなくても、表計算ソフトで作成できます。手順を整理します。

STEP1:コホートの区切りを決める

まずは初回購入月で区切るのが基本です。目的が明確であれば、チャネル別や商品別を選んでも構いません。

複数の軸を同時に扱うと表が複雑になります。最初は1つに絞り、慣れてから組み合わせましょう。

分析の目的が定まっていれば、区切りも自然に決まります。何を判断したいのかを先に言語化してから着手してください。

STEP2:追跡する期間の単位を決める

月単位が扱いやすい単位です。購入頻度の高い商材であれば週単位、購入間隔の長い商材であれば四半期単位を選びます。

食品や日用品のように消費のサイクルが短い商材と、家電や家具のように数年単位の商材では、適切な単位がまったく違います。

目安として、自社商材の平均的な購入間隔の半分程度を単位にすると、変化を捉えやすくなります。

単位が粗すぎると離脱のタイミングが分からず、細かすぎると数値が不安定になります。実際に両方で作ってみて、判断しやすいほうを採用する方法もあります。

STEP3:必要なデータを抽出する

必要なのは、顧客を識別できる情報、購入日、購入金額の3つです。多くのカートシステムやモールの管理画面から、注文データとして出力できます。

高価な分析ツールは必ずしも必要ありません。注文データさえ取り出せれば、表計算ソフトの集計機能で作成できます。

まずは直近1年分程度のデータで試してみると、自社の傾向がつかめます。

複数の販路がある場合は、同一人物を名寄せできるかが課題になります。難しければ、販路ごとに別々の分析として扱いましょう。

モールでは購入者の情報が限定的にしか得られない場合もあります。取得できる範囲を確認したうえで、分析の設計を決めてください。

STEP4:表の形に整理する

縦に初回購入月、横に経過期間を並べます。各セルには、その月に初回購入した顧客のうち、経過期間後に購入した人の割合を入れます。

たとえば1月に初回購入した顧客が100人いて、そのうち2月に20人が再購入していれば、1か月後のセルは20%となります。3月に15人であれば、2か月後のセルは15%です。

新しい月ほど経過期間が短いため、右下が空白の三角形の表になります。この形が、コホート分析の典型的な見た目です。

セルに色の濃淡をつけると、傾向が視覚的に把握しやすくなります。数値が並ぶだけの表より、社内での共有にも向きます。

数値が高いほど濃い色にすると、どの時期のコホートが良好かが一目で分かります。会議で説明する際にも伝わりやすくなります。

STEP5:読み解いて仮説を立てる

作った表を眺めるだけでは終わりません。次の章で解説する3つの方向から読み、なぜその差が生まれたのかを考えます。

この段階で、施策の実施時期や広告の変更時期を並べておくと、原因を紐づけやすくなります。

社内の誰かが覚えているという状態では、後から確認できません。変更の記録を残す習慣そのものが、分析の精度を支えます。

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表はどう読む?

コホート表は、見る方向によって分かることが変わります。

横に読む:時間の経過を見る

1つの行を左から右へたどると、その集団が時間とともにどう減っていくかが分かります。急激に落ちる箇所があれば、そこに離脱の要因があります。

多くのECでは、最初の1〜2か月で大きく減り、その後は緩やかになります。この曲線の形を把握しておくと、異常な月に気づけるようになります。

自社の標準的な形が分かっていれば、新しいコホートが想定どおりに推移しているかを早い段階で判断できます。

目標値を設定する際の根拠にもなります。過去の実績から現実的な水準を把握したうえで、改善幅を決められるためです。

縦に読む:集団どうしを比べる

同じ経過期間の列を上から下へ見ると、獲得した時期によって質が違うかが分かります。ある月から数値が改善していれば、その時期に実施した施策が効いた可能性があります。

この見方は、施策の効果を判断する際に最もよく使われます。実施前後のコホートを比べることで、影響が確認できます。

逆に、ある月以降に悪化しているなら、広告の出稿先を変えた、値引きを強めたといった変更が影響しているかもしれません。

斜めに読む:同じ時期の出来事を見る

表を斜めにたどると、同じ暦月に該当するセルが並びます。すべてのコホートで同時に数値が動いていれば、施策ではなく外部の要因が影響していると考えられます。

大型セール、季節要因、システムの不具合などが該当します。この見方ができると、原因の切り分けが正確になります。

自社の施策ではない要因を、施策の成果と取り違えないためにも重要な視点です。

件数もあわせて確認する

割合だけを見ていると判断を誤ります。対象が10人しかいない月の30%と、1,000人の月の30%では意味が違うためです。表には人数も併記しておきましょう。

売上金額を併記する方法もあります。人数が少なくても単価が高い層であれば、事業への影響は大きくなります。

人数、割合、金額の3つを並べておくと、どの視点から見ても判断できる表になります。

よくある失敗は?

分析そのものは難しくありませんが、扱い方でつまずくケースがあります。

件数が少ないまま結論を出す

1つのコホートが数十人規模だと、数人の行動で割合が大きく動きます。区切りを細かくしすぎず、判断に足る人数を確保しましょう。

件数が確保できない場合は、複数月をまとめて1つのコホートとして扱う方法もあります。粒度を落としてでも、判断できる状態にすることが優先です。

期間が短いうちに判断する

購入間隔が3か月の商材で、1か月後の数値だけを見て「リピートしていない」と判断するのは早計です。商材の購入サイクルを踏まえた期間で評価してください。

直近のコホートほどデータが不足しています。まだ経過期間の短い集団を、成熟した集団と同列に比較しないよう注意しましょう。

作って終わりにする

表を作った時点で満足してしまい、施策につながらないケースです。どの数値が悪いのか、なぜそうなったのかを議論する場まで設計しておきましょう。

定期的に更新する運用にすることも重要です。月次で数値を追う仕組みにしておけば、変化に早く気づけます。

毎月ゼロから作り直すのではなく、行を追加していく形にしておけば、更新の負担も小さく済みます。

担当者が変わっても継続できるよう、作成手順を残しておくことも大切です。

数値の背景を確認しない

コホート分析で分かるのは、何が起きたかまでです。なぜ起きたのかは、レビューや顧客の声から補う必要があります。数値と定性の情報を組み合わせて初めて、打ち手が定まります。

離脱した顧客に理由を尋ねる調査を組み合わせると、精度は大きく上がります。数値で対象を特定できるため、聞くべき相手も明確になります。

指標の定義を揃えない

リピートを「2回目の購入」とするのか「一定期間内の再購入」とするのかで、数値は変わります。社内で定義を統一しないまま数字を回すと、議論がかみ合いません。指標の設計はECサイトに導入するべき7つのKPI!設定方法やKGIとの違いも紹介もあわせてご覧ください。

結果をどう活かす?

分析の目的は、次の行動を決めることです。

働きかけるタイミングを決める

離脱が集中している時期が分かれば、その手前で接触する設計ができます。初回購入から1か月で大きく落ちているなら、3週間後にフォローを送るといった判断です。

接触の内容も、離脱の理由に応じて変えます。商品が合わなかったのか、単に忘れられているのかで、有効な打ち手は異なります。

前者であれば別の商品の提案、後者であれば思い出してもらう内容というように、送るものが変わります。

メールやクーポンなど、再購入を促す手段の使い分けは楽天クーポンの発行方法や効果的な活用は?RaCoupon徹底解説でも整理しています。

広告予算の配分を見直す

チャネル別のコホートで差が出ていれば、配分を変える根拠になります。獲得単価が高くても継続率が高いチャネルは、長期で見れば有利です。

社内で予算を議論する際にも、この数値は説得力を持ちます。初回の効率だけで判断されがちな場面で、長期の視点を持ち込めます。

入口商品を設計する

継続率の高い商品が分かれば、その商品を広告や特集の中心に据えられます。初回に何を買ってもらうかは、その後の関係を左右します。

お試しセットや少量サイズを入口として設計している場合は、その後の継続率が想定どおりかを必ず確認しましょう。入口としての役割を果たしていなければ、設計を見直す必要があります。

顧客データを扱える体制を整える

継続的に分析するには、購買データを蓄積し、必要な形で取り出せる状態が前提になります。ツールの選定と運用についてはECサイトにCRMを導入する3つの目的!おすすめのツールや注意点も解説で解説しています。

ただし、ツールを入れれば分析できるようになるわけではありません。何を見たいのかが決まっていなければ、機能を使いこなせないまま費用だけが発生します。

まずは手作業でも表を作ってみて、何が見えるのかを確かめる。そのうえで、継続的に必要だと判断できてからツールを検討するという順序が確実です。

まとめ

コホート分析は、同じ時期に購入し始めた顧客を集団として追い、時間の経過による変化を見る手法です。全体平均では新規と既存が混ざってしまう問題を解消し、リピートの実態を正確に捉えられます。

作成は、区切りを決め、期間の単位を決め、注文データを抽出し、三角形の表に整理して読み解くという流れです。表計算ソフトでも十分に作成できます。

読み方は、横に見て時間経過を、縦に見て集団間の差を、斜めに見て外部要因を確認するという3方向です。件数の少ない区分で結論を出さないこと、商材の購入サイクルに合った期間で評価することを守れば、施策の効果検証に使える道具になります。

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