似た名称の商品が現れた、模倣品が出回った、他社に先に登録されていた。ブランドが育ってから直面すると、対応にかかる費用も労力も大きくなります。
商標登録は、こうした事態を防ぐための手続きです。費用は決して安くありませんが、後から取り戻す労力と比べれば、先に手を打つほうが確実です。
本記事では、商標登録にかかる費用の内訳と計算方法を整理したうえで、手続きの流れ、費用を抑える方法、そして注意点までを解説します。
なお、料金や制度は改定されることがあります。実際に手続きを行う際は、特許庁の最新情報や専門家に確認したうえで進めてください。
| 確認したいポイント | 結論 | 詳細 |
|---|---|---|
| 費用はいくら? | 区分の数で決まる | 出願と登録の2段階で費用が発生します。 |
| 何が費用を左右する? | 区分の数 | 扱う商品やサービスの範囲で変わります。 |
| 自分でもできる? | 手続き自体は可能 | ただし調査と区分の選定に判断が必要です。 |
| 期間は? | 半年から1年程度 | 早期の審査を求める制度もあります。 |
| いつ出す? | ブランドを決めた段階で | 先に他社が登録すると使えなくなります。 |
この記事でわかること
- ECで商標登録が必要になる場面
- 費用の内訳と計算方法
- 出願から登録までの手順と期間
- 費用を抑えるための考え方
- 見落としやすい注意点
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なぜ商標登録が必要なのか
商標登録とは、自社の商品やサービスに使う名称やロゴを、独占して使える権利として登録する手続きです。登録されていなければ、他社が同じ名称を使っても止められません。
他社に先に登録されると使えなくなる
日本では、先に出願した側が権利を得る仕組みになっています。長く使ってきた名称であっても、他社が先に登録すれば、自社が使えなくなる可能性があります。
先に使っていたという事実だけでは、権利を主張できないのが原則です。
広く知られている名称であれば別の扱いになる場合もありますが、その水準に達しているかの判断は容易ではありません。
争いになれば、時間も費用もかかります。予防しておくほうが確実です。
この点が、商標登録を先に済ませておく最大の理由です。
この場合、名称の変更を求められることもあります。パッケージ、サイト、広告のすべてを作り直すことになり、費用も信用への影響も大きくなります。
登録にかかる費用と比べれば、この負担のほうがはるかに大きくなります。
在庫として抱えているパッケージも、使えなくなる可能性があります。
印刷物や販促物も含めると、影響は広範囲に及びます。
模倣品への対応
一定の認知を得ると、似た名称の商品や模倣品が現れることがあります。権利がなければ、対応の手段が限られます。
モールでは、権利者向けに申告できる仕組みが用意されている場合があります。この仕組みを使うにも、登録が前提になります。
模倣品が放置されると、品質への評価にも影響します。自社の商品として認識されてしまうためです。
低評価のレビューが、実は模倣品に対するものだったという例もあります。
自社の商品として評価されるため、防ぐ手段を持っておく意味があります。
出店や取引の条件になることがある
モールへの出店や、大手の取引先との契約で、商標の登録を求められることがあります。特にブランドとして展開する場合、この条件は珍しくありません。
出店の準備を進めてから条件が判明すると、開始の時期が大きくずれます。販路を検討する段階で確認しておきましょう。サイトの立ち上げ全体の流れはECサイト制作のポイントでも整理しています。
海外展開の前提になる
国ごとに権利は別です。日本で登録していても、海外では保護されません。
現地で第三者に先に登録されていると、販売そのものが困難になります。越境ECを検討するなら、早い段階での確認が必要です。
出願から登録までには期間がかかります。展開を決めてから動くのでは間に合わないこともあります。
国によっては、日本より審査に時間がかかる場合もあります。
展開の計画から逆算して、着手の時期を決めましょう。
費用はいくらかかる?
費用は、特許庁に納める法定の費用と、専門家に依頼する場合の報酬に分かれます。
特許庁に納める費用
出願と登録の2段階で発生します。金額は区分の数によって変わります(出典:特許庁「産業財産権関係料金一覧」)。
| 段階 | 計算方法 | 備考 |
|---|---|---|
| 出願時 | 3,400円+8,600円×区分数 | 審査を受けるための費用 |
| 登録時(10年) | 32,900円×区分数 | 登録が認められた後に納付 |
| 登録時(5年分割) | 17,200円×区分数を2回 | 総額は一括より高くなる |
| 更新時(10年) | 43,600円×区分数 | 10年ごとに更新できる |
1つの区分で10年分をまとめて納める場合、出願時に12,000円、登録時に32,900円の合計44,900円が特許庁に納める費用になります。
金額は改定されることがあります。手続きの前に、特許庁の最新の情報を確認してください。
区分の数で大きく変わる
区分とは、商品やサービスの分類のことです。扱う範囲が広いほど、必要な区分も増えます。
たとえば、化粧品を扱う場合と、その販売サービスも保護したい場合では、必要な区分が変わります。
区分の一覧は公開されています。自社の事業がどこに該当するかを確認しましょう。
類似する商品やサービスが同じ区分にまとめられているため、一覧を見れば当たりをつけられます。
たとえば3つの区分で出願する場合、出願時が29,200円、登録時が98,700円となり、合計で127,900円になります。区分が増えるほど費用も比例して増える構造です。
必要のない区分を含めると、そのまま費用の増加につながります。この判断が、総額を左右する最大の要素です。
逆に、必要な区分を削ると保護されない範囲が生まれます。安さだけで決めないようにしましょう。
守るべき範囲と費用のつり合いを、事業の規模に応じて判断してください。
分割納付という選択肢
登録料は、10年分を一括で納める方法と、5年ずつ2回に分けて納める方法があります。
分割にすると初期の負担は減りますが、総額は一括より高くなります。長く使う予定であれば、一括のほうが有利です。
事業として続けるかどうか見通しが立たない段階では、分割を選ぶという判断もあり得ます。
専門家に依頼する場合の費用
弁理士に依頼する場合、上記に加えて報酬が発生します。金額は事務所ごとに設定されており、一律の基準はありません。
目安としては、出願時と登録時をあわせて1区分あたり数万円から十数万円程度になることが多いようです。調査を含むか、拒絶への対応が含まれるかによっても変わります。
依頼する際は、どこまでの作業が含まれるかを確認しておきましょう。拒絶の通知が届いた場合の対応が別料金になることもあります。
見積もりの段階で、総額の目安を確認しておくと安心です。
複数の事務所から見積もりを取り、内容を比べるという方法もあります。
総額の目安
自分で手続きを行う場合、1区分であれば5万円弱、3区分でも13万円程度で済みます。
この金額を高いと感じるかどうかは、守るものの価値によって変わります。ブランドが育つほど、登録していなかった場合の損失は大きくなります。
売上が数千万円規模になってから名称を変えることになれば、影響額は登録費用とは比較になりません。
先に手を打つことの価値は、この差にあります。
専門家に依頼する場合は、区分の数と依頼する範囲によりますが、これに数万円から数十万円が加わると考えておきましょう。
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手続きの流れは?
出願から登録までの流れを整理します。
STEP1:登録する対象を決める
文字だけの商標にするか、ロゴを含めるかを決めます。それぞれ保護される範囲が異なります。
文字で登録すれば、書体を変えても保護の対象になるのが一般的です。ロゴで登録した場合、その形での使用が前提になります。両方を登録するという選択もあります。
予算が限られている場合は、まず文字での登録を優先するという考え方もあります。
文字のほうが、使い方の幅が広いためです。
STEP2:区分を決める
自社が扱う商品やサービスに対応する区分を選びます。ここで選んだ範囲でしか権利は及びません。
広く取れば安心ですが、そのぶん費用も増えます。実際に使う予定のある範囲に絞るのが基本です。
一方で、必要な区分が抜けていると、その分野では保護されません。事業の内容を整理したうえで判断しましょう。
現在の事業と、近い将来に始める予定があるものを整理してから決めるのが確実です。
迷った場合は、専門家に相談したうえで判断しましょう。
STEP3:先行する商標を調べる
同じ、あるいは似た商標がすでに登録されていないかを確認します。特許庁が提供する検索の仕組みを使えば、自分でも調べられます。
この調査を省くと、出願しても拒絶され、納めた費用が戻らないということになります。時間をかけて確認する価値があります。
出願料は、登録されなくても返還されません。
調査に時間をかけることが、結果的に費用を抑えることにつながります。
似ているかどうかの判断は難しい面もあります。判断に迷う場合は、専門家に相談しましょう。
文字が違っても、読み方や意味が近ければ似ていると判断されることがあります。
自社では違うと考えていても、審査では似ていると判断されることがあります。
検索の際は、表記の揺れも含めて広く調べておきましょう。
STEP4:出願する
願書を作成し、特許庁に提出します。電子的に手続きする方法と、書面で行う方法があります。
必要な様式や記載の方法は、特許庁の資料で確認できます。
記載に不備があると、補正を求められて期間が延びます。
書面の場合は、電子化のための費用が別途発生します。
件数が少なければ大きな差にはなりませんが、確認しておきましょう。
STEP5:審査を受ける
出願から結果が出るまで、おおむね半年から1年程度かかります。急ぐ事情がある場合、早期に審査を求める制度が用意されています。
商品の発売時期が決まっている場合は、この期間を見込んで逆算しておきましょう。
早期の審査を利用する場合も、一定の条件を満たす必要があります。
登録できない理由があると通知が届きます。この場合、意見を述べる、内容を補正するといった対応が必要になります。
この対応には期限があります。放置すると、そのまま登録されずに終わります。
対応の内容によっては、専門家の助言があったほうが確実です。
STEP6:登録料を納める
登録が認められると通知が届きます。期限内に登録料を納めることで、正式に権利が発生します。
この期限を過ぎると、それまでの手続きが無駄になります。通知が届いたら速やかに対応しましょう。
通知が届く時期は事前に分かりません。連絡先の管理も含めて、受け取れる体制にしておきましょう。
STEP7:10年ごとに更新する
権利の期間は10年です。更新の手続きを行えば、その後も継続できます。
更新の際にも費用が発生します。長期の費用として見込んでおきましょう。
使わなくなったブランドは、更新しないという判断もあります。
更新を忘れると権利が消滅します。管理する担当を決めておきましょう。
10年後のことであるため、忘れられやすい手続きです。記録を残す仕組みを作っておきましょう。
担当者が変わっても引き継がれる形にしておくことが重要です。
費用を抑えるには?
必要な保護を確保しつつ、負担を抑える方法があります。
区分を絞る
最も効果が大きいのがここです。費用は区分の数に比例するため、本当に必要な範囲だけに絞ることで大きく変わります。
将来やるかもしれない事業まで含めると、費用は膨らみます。必要になった時点で追加の出願をするという選択もあります。
ただし、その時点で他社に登録されているという危険もあります。可能性の高さで判断しましょう。
関連の深い分野は先に押さえ、遠い分野は後回しにするという整理が現実的です。
自分で手続きを行う
専門家に依頼しなければ、法定の費用だけで済みます。手続き自体は、書式に従えば行えます。
ただし、区分の選定と先行商標の調査には判断が必要です。ここを誤ると、出願しても登録されず、費用が無駄になります。
調査だけを専門家に依頼し、出願は自分で行うという方法もあります。
最も判断が難しい部分だけを任せるという考え方です。
支援の制度を確認する
中小企業や個人事業主を対象に、費用の一部が軽減される制度が用意されている場合があります。条件を満たすかを確認してみましょう。
制度の内容は変わることがあります。手続きの前に、直近の情報を確かめてください。
申請には期限や条件があるため、余裕を持って確認しましょう。
自治体が独自に支援を行っている例もあります。所在地の情報も調べておく価値があります。
海外への出願を支援する制度が用意されている場合もあります。
登録料は一括で納める
分割にすると初期の負担は減りますが、総額は高くなります。長く使う予定であれば、一括のほうが有利です。
優先順位をつける
複数のブランドを持っている場合、すべてを同時に登録すると負担が大きくなります。売上の中心となるものから順に進めるという判断も現実的です。
ただし、後回しにしたものが他社に登録される危険は残ります。優先順位は慎重に決めましょう。
注意すべき点は?
手続き以外にも、押さえておくべき点があります。
早い段階で出願する
ブランドが育ってから出願しようと考えていると、その間に他社が登録してしまう可能性があります。名称を決めた段階で動くのが確実です。
広告や販売を始めた後で名称を変えることになれば、それまでの認知も失われます。
積み上げてきたレビューや検索での評価も、名称が変われば引き継げません。
登録できない場合がある
商品の内容をそのまま表す言葉、ありふれた名称、他社の登録商標と似たものは、登録が認められないことがあります。
たとえば、商品の品質や産地をそのまま示す言葉は、特定の事業者に独占させるべきではないと判断されます。
独自性のある名称ほど、登録が認められやすくなります。
名称を考える段階から、この点を意識しておくと手戻りを防げます。
名称を決める段階で、登録できる可能性があるかを確認しておくと、後の手戻りを防げます。
登録しただけでは終わらない
権利を持っていても、使われていることに気づかなければ対応できません。定期的に、似た名称が使われていないかを確認しましょう。
また、一定期間使用していないと、権利が取り消される場合もあります。実際に使っている状態を保つことが前提です。
登録した区分のすべてで使っているかも、確認しておく価値があります。
使用している事実を示せる資料を、残しておくと安心です。
パッケージの写真や、販売ページの記録が該当します。
海外は別に手続きが必要
日本での登録は、日本国内でのみ有効です。海外で販売する予定があるなら、その国での手続きが別に必要になります。
複数の国をまとめて出願できる仕組みもあります。展開の計画に応じて検討しましょう。
国ごとに個別に出願するより、費用や手続きの負担を抑えられる場合があります。
ブランドの設計とあわせて考える
名称やロゴは、商品そのものと同じくらい重要な要素です。企画の段階から、権利の確保も含めて設計しましょう。商品づくりの進め方は商品企画・開発支援でもご紹介しています。
サイトでの表示や、口コミの広がり方にも影響します。ブランドの伝え方については口コミ・UGCの獲得支援もあわせてご覧ください。
まとめ
商標登録の費用は、区分の数で決まります。1区分で10年分を一括で納める場合、特許庁に納める費用は出願時と登録時をあわせて4万円台です。3区分であれば13万円程度になります。
専門家に依頼する場合は、これに報酬が加わります。自分で手続きすることも可能ですが、区分の選定と先行商標の調査には判断が必要で、誤ると費用が無駄になります。
最も重要なのは、名称を決めた段階で早く動くことです。日本では先に出願した側が権利を得るため、ブランドが育ってからでは間に合わないことがあります。区分は実際に使う範囲に絞り、必要になった時点で追加するという進め方で、負担を抑えながら保護を確保しましょう。
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