購買履歴はカートに、サイト内の行動は解析ツールに、問い合わせは別のシステムに。同じ人の情報が別々の場所に散らばっていると、その人が何を求めているのかは見えません。
これを個人単位で結びつける基盤がCDPです。ただし、CRMやDMPとの違いが分かりにくく、どれを検討すべきか判断できないという声もよく聞かれます。
本記事では、CDPの役割を整理したうえで、DMPやCRMとの違い、ECでできること、導入を判断する基準、そして個人情報の取り扱いに関する注意点までを解説します。
| 確認したいポイント | 結論 | 詳細 |
|---|---|---|
| CDPとは? | 個人単位でデータを統合する基盤 | 分散した情報を1人に紐づけて扱えるようにします。 |
| CRMとの違いは? | 扱うデータの範囲が広い | 購買だけでなく、行動データも含めて統合します。 |
| DMPとの違いは? | 個人を識別できるかどうか | DMPは匿名の傾向、CDPは個人単位が中心です。 |
| 導入すべき? | 規模とデータの分散度による | 統合すべき情報源が少なければ必要性は下がります。 |
| 注意点は? | 統合した時点で個人情報になる | 匿名の情報も、紐づければ扱いが変わります。 |
この記事でわかること
- CDPの役割と、統合するデータの範囲
- DMP、CRM、MAとの違いと使い分け
- ECで実現できることと、その効果
- 導入を判断する基準
- 個人情報の取り扱いに関する注意点
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CDPとは?
CDPとは、複数の場所に分散している情報を、個人単位で結びつけて管理する基盤です。集めて終わりではなく、他のツールへ渡して活用することまでを役割としています。
Customer Data Platformの頭文字を取った言葉です。近年よく耳にするようになりましたが、すべての事業者に必要な仕組みというわけではありません。
規模や体制によっては、より簡易な手段で同じ目的を果たせます。まず自社に必要かを見極めることが先決です。
顧客データ基盤と訳されることもあります。特定の施策を実行する道具というより、施策の土台を整える仕組みだと捉えると分かりやすくなります。
土台であるがゆえに、それ自体では成果を生みません。この性質を理解しておかないと、導入後に期待とのずれが生じます。
データが整うことと、売上が伸びることの間には、施策という工程が挟まります。
何を統合するのか
| データの種類 | 主な取得元 | 分かること |
|---|---|---|
| 購買データ | カートシステム | 何をいつ、いくらで買ったか |
| 行動データ | サイトの解析 | どのページを見て、何を検索したか |
| 属性データ | 会員登録、アンケート | 年齢層、居住地域、関心 |
| 接触データ | 配信ツール | メールを開いたか、反応したか |
| 対応データ | 問い合わせの記録 | 何に困り、どう解決したか |
これらを1人の顧客に紐づけられることが、CDPの中心的な価値です。購買データだけでは分からない検討の過程が見えるようになります。
何を買ったかだけでなく、何と迷ったのか、どこで止まったのかまで把握できれば、打てる手も増えます。
ただし、把握できることと、それを施策に変えられることは別です。読み解く力が伴って初めて価値になります。
渡すことまでが役割
統合したデータは、配信ツール、広告、分析ツールなどへ出力して使います。CDP自体が施策を実行するわけではありません。
この点が、施策の実行まで含むCRMやMAとの大きな違いになります。
この点を理解していないと、導入したのに何も変わらないという事態になります。データを使う先が決まっていることが前提です。
接続先のツールがなければ、統合したデータは眠ったままになります。出力先まで含めた設計が必要です。
どのツールと接続できるかは、選定時の重要な確認項目になります。
DMP・CRMと何が違う?
名称が似ているため混同されますが、扱うデータと目的が異なります。
| 項目 | CDP | DMP | CRM |
|---|---|---|---|
| 扱うデータ | 自社の各種データ | 匿名の閲覧データが中心 | 購買と対応の履歴 |
| 個人の識別 | 個人単位で識別する | 識別しないことが多い | 個人単位で識別する |
| 主な用途 | 統合と他システムへの連携 | 広告の配信対象の設定 | 顧客との関係管理 |
| データの出所 | 自社で取得したもの | 外部から購入する場合も | 自社で取得したもの |
CRMとの違い
CRMは、購買履歴や対応履歴を中心に、顧客との関係を管理することが目的です。分析と施策の実行まで、1つの仕組みの中で完結することが多くあります。
顧客の分類や配信の出し分けも、CRMの中で行えるのが一般的です。
これに対してCDPは、扱うデータの範囲がより広く、サイト内の行動や広告への反応まで含めて統合します。そして統合した結果を、他のツールへ渡すことを前提としています。
CRMが施策まで実行するのに対し、CDPはデータを整えて渡すところまでという役割分担だと捉えると整理しやすくなります。
規模が大きくなく、統合すべき情報源も少ない事業者であれば、CRMで十分に対応できる場合がほとんどです。CRMの選び方はECサイトにCRMを導入する3つの目的!おすすめのツールや注意点も解説で整理しています。
DMPとの違い
DMPは、主に広告の配信対象を設定するために使われてきた仕組みです。誰であるかを特定せず、傾向の似た集団として扱うのが基本でした。
外部から購入したデータを組み合わせて、自社では把握できない属性を補うという使い方もされてきました。
CDPは、自社の顧客一人ひとりを識別したうえで扱います。匿名の集団を対象とするか、特定できる個人を対象とするかが、両者の分かれ目です。
自社で取得したデータのみを扱う形のDMPもあり、その場合はCDPとの境界がさらに曖昧になります。名称ではなく中身で判断しましょう。
近年は、外部データの利用に制約が増えたことで、自社で取得したデータの重要性が高まっています。この流れがCDPへの関心につながっています。
自社の顧客との接点から得た情報は、他社が持っていない資産です。この価値が相対的に上がっているという背景があります。
外部の環境が変わっても、自社で取得したデータは影響を受けにくいという安定性もあります。
MAとの関係
MAは配信を自動化する仕組みであり、CDPは配信に使うデータを整える仕組みです。役割が違うため、対立するものではありません。
ただし、MAやCRMにもデータを統合する機能が含まれる場合があります。自社の必要とする範囲が、既存のツールで満たせないかを先に確認しましょう。
これらを別々に導入すると、費用も運用の負担も積み上がります。まとめられる部分はまとめるほうが現実的です。
契約が増えるほど、担当者が把握すべき範囲も広がります。
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ECでは何ができる?
統合によって可能になることを整理します。
検討の過程が見える
購入した商品だけでなく、その前にどのページを見て、何と比較していたかが分かります。購入に至らなかった人の動きも追えます。
購入者だけを見ていると、なぜ選ばれなかったのかは分かりません。離脱した人の動きを把握できる点に価値があります。
サイト内で何を探していたかは、特に重要な手がかりです。取得の方法はEC内での「サイト内検索キーワード」確認方法は?GA4での設定方法についても具体的に解説で解説しています。
販路をまたいで同一人物を把握できる
モールと自社ECの両方で購入している顧客を、同じ人として扱えます。販路ごとに分断されていた情報が、1つにまとまります。
同じ人を別の顧客として数えていると、リピート率も実際より低く出ます。数値の解釈にも影響します。
ただし、モール側の制約で完全な統合ができない場合もあります。どこまで可能かは事前に確認が必要です。
統合できない場合は、販路ごとに把握するという割り切りも必要です。無理に統合するより、確実に分かる単位で運用するほうが有益です。
条件を細かく指定して抽出できる
特定の商品ページを何度も見ているが購入していない人、前回の購入から一定期間が経ち、かつ特定のカテゴリを閲覧している人といった抽出が可能になります。
購買データだけでは、こうした条件は設定できません。行動データが加わることで初めて可能になります。
この精度で対象を絞れると、届ける内容も具体的にできます。
ただし、条件を細かくするほど該当する人数は減ります。効果を検証できる規模になっているかも確認しましょう。
数十人しか該当しない条件では、施策の成否を判断できません。
抽出できることと、施策として成立することは別だと理解しておきましょう。
広告の対象を自社データで設定できる
既存顧客を除外して新規獲得に集中する、購入した人に似た層を対象にするといった設定に、自社のデータを使えます。
すでに購入している人に新規向けの広告を出し続ける無駄も、これで減らせます。
外部データに依存しない形で広告の精度を高められる点が、近年注目されている理由のひとつです。
ただし、データを渡す際には法令上の確認事項があります。後述の点を踏まえて進めてください。
部門をまたいだ共通の顧客像を持てる
商品開発、マーケティング、サポートが同じデータを見て議論できる状態になります。部門ごとに別の顧客像を持っている状況を解消できます。
部門をまたいだ議論が噛み合わない原因の多くは、見ているデータが違うことにあります。
共通の基盤があれば、前提の確認に時間を取られることも減ります。
導入すべきかどう判断する?
規模が大きくない事業者にとっては、過剰な投資になる場合もあります。
| 項目 | 検討する価値が高い | 必要性が低い |
|---|---|---|
| データの分散 | 複数のシステムに散在 | カート内でほぼ完結 |
| 顧客数 | 数万件以上ある | 数千件程度 |
| 販路 | 複数を併用している | 1つに集中している |
| 体制 | 分析できる担当がいる | 設定する人がいない |
| 活用先 | 使う施策が決まっている | 何に使うか未定 |
まず既存のツールで足りないかを確認する
カートシステムやCRMに、必要な機能が含まれている場合があります。新たに契約する前に、いま使えるもので何ができるかを確認しましょう。
多くの事業者にとって、まず取り組むべきは既存データの活用です。統合の仕組みを入れる前に、いま持っている情報を使い切れているかを見直しましょう。
統合したい情報源が2つか3つ程度であれば、それぞれのデータを書き出して突き合わせるだけでも分析はできます。
この方法で一度試してみると、統合によって何が見えるようになるかを実感できます。
手作業で見えたものが施策につながるなら、仕組みへの投資も判断しやすくなります。
使う先が決まっているか
統合したデータを何に使うのかが決まっていなければ、蓄積されるだけで終わります。配信の出し分けなのか、広告の設定なのか、分析なのかを先に決めましょう。
先に仕組みを入れてから使い方を考えるという進め方は、多くの場合うまくいきません。
目的が決まれば、必要なデータの種類も絞れます。すべてを統合する必要はありません。
統合する範囲が広がるほど、接続の作業も個人情報の管理も複雑になります。
体制と費用を見積もる
導入には、システムの接続作業とデータの整備が必要です。費用も、他のツールと比べて高くなる傾向があります。
初期の構築だけで数か月かかることもあります。すぐに成果を求められる状況では、着手そのものを見送る判断もあり得ます。
運用にかかる人的なコストも見込んでおきましょう。指標の設計と同様に、見る人がいなければ意味がありません。考え方はECサイトに導入するべき7つのKPI!設定方法やKGIとの違いも紹介でも整理しています。
個人情報の観点で注意すべきことは?
データを統合する仕組みである以上、この点の理解は欠かせません。
統合すると扱いが変わる
端末を識別する情報や閲覧履歴は、単体では個人を特定できない情報として扱われます。しかし、他の情報と容易に照合して個人を識別できる場合は、全体として個人情報に該当します(参考:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドラインに関するQ&A」)。
CDPは、まさにこの照合を行う仕組みです。統合した時点で、匿名だった情報も個人情報として扱う必要が生じます。
この認識がないまま運用すると、必要な手続きを踏まないまま個人情報を扱うことになりかねません。
利用目的の通知や公表が必要になるため、プライバシーポリシーの記載も見直しが必要です。
外部へ渡すときの規律
個人を特定できない情報であっても、提供先がそれを個人データとして取得することが想定される場合、本人の同意が得られていることを確認する義務が生じます。
広告の配信先へデータを渡す場面などが該当し得ます。渡す相手がどう扱うのかまで含めて確認する必要があります。
渡した先で何が行われるかを把握しないまま連携すると、意図せず義務を果たしていない状態になります。
利用目的の範囲を超えない
取得したときに示した目的を超えて使う場合、あらためて同意が必要になることがあります。統合によって新しい使い方が生まれるからこそ、この確認は重要です。
プライバシーポリシーの記載が実態に追いついているかを、導入時に必ず確認しましょう。
外部への情報送信にも対応する
サイトにタグを設置して行動を記録する場合、送信される情報の内容や送信先を通知または公表する対応も必要になります。
広告や解析のタグも同じ対象です。サイト全体で設置しているタグを一度棚卸ししておきましょう。
社内の権限を設計する
統合された情報は、それだけ価値も危険も大きくなります。誰がどこまで見られるかを決めておくことが、漏えいを防ぐ基本になります。
権限の設定ができる仕組みかどうかも、選定時に確認しておきましょう。
導入はどう進める?
順序を守ることで、使われないまま終わる事態を防げます。
STEP1:何に使うかを決める
統合そのものを目的にしないことが最も重要です。どの施策のために、どのデータが必要なのかを先に決めましょう。
データを統合したいという要望は、多くの場合その先に別の目的があります。それを言語化することから始めてください。
STEP2:現状のデータを棚卸しする
どのシステムに何の情報があり、個人を識別できる項目が揃っているかを確認します。ここで不足が分かれば、先に取得する仕組みを整えられます。
ゲスト購入が多い場合、同一人物の特定そのものが困難です。会員登録を促す設計から見直す必要があるかもしれません。
STEP3:統合の範囲を絞る
最初からすべてを統合しようとすると、期間も費用も膨らみます。目的に必要な2つか3つの情報源から始めるのが現実的です。
多くの場合、購買データとサイト内の行動データを結びつけるだけでも、見えるものは大きく変わります。
STEP4:データを整える
表記のゆれ、重複、識別子の不一致を解消します。この作業を飛ばすと、統合しても正しく紐づきません。
顧客数が多いほど、この作業には時間がかかります。スケジュールに組み込んでおきましょう。
STEP5:小さく使い始める
1つの施策で試し、効果を確認してから範囲を広げます。全社的に展開する前に、実際に成果が出るかを確かめましょう。
成果が確認できれば、社内での理解も得やすくなります。
STEP6:運用を定着させる
誰がいつ数値を見て、どう判断するのかを決めます。仕組みを入れただけでは、何も変わりません。
担当が決まっていない状態では、時間の経過とともに使われなくなります。
まとめ
CDPは、分散した情報を個人単位で結びつけ、他のツールへ渡すための基盤です。購買だけでなく行動や接触の記録まで統合できる点が、CRMとの違いになります。
DMPとの違いは、個人を識別するかどうかです。DMPが匿名の集団を対象とするのに対し、CDPは自社の顧客一人ひとりを扱います。外部データの利用に制約が増えるなかで、自社データを統合する意義は高まっています。
ただし、統合すべき情報源が少ない事業者では、CRMや既存のツールで十分な場合がほとんどです。まず何に使うのかを決め、既存の環境で実現できないかを確認してから検討してください。また、統合した時点で匿名だった情報も個人情報として扱う必要が生じます。利用目的の記載と社内の権限設計まで含めて準備しましょう。
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