資料を並べて比べても、どれも良く見えて判断できない。カートシステムの比較でよくある状態です。
原因は、比較の軸が定まっていないことにあります。何が必須で、何があれば望ましいのかを先に整理しなければ、機能の多さで選ぶことになります。
本記事では、比較の前に行うべき要件の整理から、確認すべき機能の一覧、費用や保守の見方、そして比較を進める手順までを解説します。
| 確認したいポイント | 結論 | 詳細 |
|---|---|---|
| 何から始める? | 要件の整理から | 比較の前に、必須と希望を分けておきます。 |
| 誰に聞く? | 実際に業務を行う担当者 | 管理する側だけでは条件が漏れます。 |
| 何を比較する? | 機能と費用と保守 | 機能だけを見ると、運用で困ります。 |
| 候補はいくつ? | 3社程度に絞る | 多いほど比較の軸が定まらなくなります。 |
| 最後の決め手は? | 現場が扱えるか | 使われなければ、機能は意味を持ちません。 |
この記事でわかること
- 比較の前に要件を整理する方法
- 確認すべき機能を分野ごとに網羅
- 機能以外に比較すべき項目
- 比較を進める実務の手順
- 選定でよくある失敗
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比較の前に何をする?
いきなり製品を並べても判断できません。自社が何を必要としているかを先に決めることが、比較の出発点になります。
この整理をしないまま資料を集めると、どれも良く見えて決められないという状態に陥ります。
各社の資料は、自社の強みを中心に書かれています。前提を持たずに読めば、印象で判断することになります。
自社の要件という物差しを持って初めて、資料の内容を評価できます。
必須と希望を分ける
要件を書き出したら、それがなければ運用できないものと、あれば便利なものに分類します。この作業をせずに比較を始めると、すべてを満たそうとして規模も費用も膨らみます。
分類の作業は、社内で議論しながら進めましょう。人によって必須の認識が違うことが、この段階で見えてきます。
必須の項目は、その1点で候補から外せる条件です。厳しく判断してください。希望の項目が多すぎる場合は、優先順位もつけておきましょう。
迷ったものは希望に分類します。必須が増えるほど、選べる候補は減ります。
必須をすべて満たす製品が存在しない場合は、条件そのものを見直す必要があります。
運用で回避できるものがないかを、あらためて検討しましょう。
現場の担当者に確認する
受注、出荷、問い合わせ対応、それぞれの担当者に、日々どんな作業をしているかを聞きます。
聞き取りの際は、困っていることだけでなく、いま問題なくできていることも確認します。新しい環境でできなくなると、それ自体が不満になります。
当たり前にできている作業ほど、要件として挙がりにくいものです。
管理する側だけで要件をまとめると、現場でしか分からない例外処理が漏れます。公開後にその処理ができないことが判明し、手作業が残るという結果になります。
特定の取引先だけ条件が違う、季節によって手順が変わるといった事情は、現場に聞かなければ出てきません。
こうした例外への対応が、実は比較の分かれ目になることもあります。
標準の機能で対応できるか、運用で回避できるかを、要件として整理しておきましょう。
現在の課題を数値で押さえる
作業にかかっている時間、発生しているミスの件数、機会損失の金額を把握しておきます。
この数値は、導入後に改善したかを判断する基準にもなります。記録がなければ、投資の効果を説明できません。
社内で予算の承認を得る際にも、この数値が根拠になります。
感覚での説明では、投資の判断は下りません。
将来の要件も想定する
数年は使い続ける前提で選ぶことになります。定期購入を始める可能性、販路を増やす可能性、海外へ広げる可能性があるなら、その要件も考慮しておきましょう。
ただし、すべてを見越すことはできません。現時点で確実に必要なものを満たし、拡張の余地があるかを確認するという順序で考えます。
将来の可能性をすべて要件に含めると、いま必要のない機能に費用を払うことになります。
何を比較すればいい?
確認すべき機能を、分野ごとに整理します。
| 分野 | 主な確認項目 | 見落とすとどうなるか |
|---|---|---|
| 商品と在庫 | 登録の柔軟性、在庫の連携 | 手作業が残り、売り越しも発生 |
| 購入手続き | 入力項目、ゲスト購入 | 離脱率に直結する |
| 決済 | 対応手段、継続課金 | 購入されないまま終わる |
| 顧客管理 | 分類、履歴の把握 | 施策の出し分けができない |
| 販促 | クーポン、セット、会員ランク | 打てる施策が限られる |
| デザイン | 変更の範囲、表示速度 | 改善のたびに開発が必要 |
| 分析 | 取得できる数値、書き出し | 判断の材料が得られない |
| 外部連携 | 接続できるサービス | 別のツールが使えない |
商品と在庫の管理
商品の登録項目を自由に設定できるか、色やサイズの展開をどう扱えるか、セット商品を組めるかを確認します。
商品点数が多い場合は、一括での登録や更新ができるかも重要です。1件ずつ手作業では回りません。
価格の一括変更や、期間限定の価格設定ができるかも確認しておきましょう。
セールの準備にかかる時間は、この機能の有無で大きく変わります。
複数の販路がある場合は、在庫を連携できるかが重要です。連携できなければ、販路ごとに手作業で更新することになります。
この作業は毎日発生します。件数が増えるほど、負担も売り越しの危険も高まります。
モールと併売している場合は、この点の優先度が特に高くなります。
外部の在庫管理と連携する形でも解決できます。どちらの構成にするかを検討しましょう。
購入手続きの設計
入力項目を減らせるか、会員登録なしで購入できるようにできるかを確認します。この部分の設計は、離脱率に直接影響します。
購入手続きの画面を変更できない製品もあります。改善の余地がどこまであるかを確かめましょう。
公開後に改善を重ねる前提であれば、この自由度は重要な判断材料になります。
逆に、改善の予定がないのであれば、標準のまま使える製品で十分です。
入力の負担を減らす考え方はEFO対策とは?進め方・7つの具体的な手法・ツール・成功事例を徹底解説で解説しています。カートの機能でどこまで実現できるかを確かめましょう。
決済の対応範囲
必要な決済手段が使えるかは前提条件です。使いたい決済代行との接続に標準で対応していれば、導入の手間も費用も抑えられます。
対応していない場合は個別の開発が必要になります。その費用も比較に含めましょう。
将来使いたい決済手段がある場合も、対応の予定を確認しておくと安心です。
継続課金に対応しているか、カード情報の更新をどう扱うかも、定期購入を扱うなら必ず確認します。
カードの有効期限が切れた際に、決済が失敗したまま気づかないという事態も起こり得ます。再試行や通知の仕組みがあるかを確かめましょう。
顧客の管理と配信
購入回数や最終購入日で顧客を分類できるか、その条件で配信できるかを確認します。全員に同じ内容を送る運用から抜け出せるかが分かれ目です。
分類の条件を自由に組み合わせられるかどうかで、打てる施策の幅は大きく変わります。
カート単体では足りない場合、外部のツールと連携できるかが判断材料になります。
顧客データの活用についてはECサイトにCRMを導入する3つの目的!おすすめのツールや注意点も解説で整理しています。カート単体で足りるか、別のツールと組み合わせるかを判断しましょう。
販促に使える機能
クーポンの発行、セット販売、送料無料の条件設定、会員ランクといった機能が用意されているかを確認します。
これらが標準で使えるかどうかで、施策を打つまでの速度が変わります。
追加の機能として提供されている場合は、その費用も総額に含めて計算しましょう。
定期購入を扱う場合は、周期の変更、休止、解約の手続きを顧客が自分で行える画面があるかも重要です。設計の考え方は楽天市場の定期購入を攻略!メリット・デメリットから利用者UP施策まで徹底解説!でも触れています。
デザインと表示
テンプレートをどこまで変更できるか、購入手続きの画面も調整できるかを確認します。特に購入直前の画面は、転換率にも影響する可能性があります。
変更のたびに開発を依頼する形式では、改善の速度が上がりません。自社で調整できる範囲を確かめましょう。
表示の速度も確認しましょう。実際に稼働しているサイトを見せてもらい、スマートフォンでの表示を確かめるのが確実です。
画像を多く使うサイトほど、表示の速度は成果に影響します。
分析とデータの扱い
管理画面でどんな数値が確認できるか、データを書き出せるかを確認します。
外部の分析ツールを設置できるかも、あわせて確かめておきましょう。
タグを自由に設置できない製品では、計測や広告の運用に制約が生じます。
書き出せない形式でしか保存されない場合、乗り換えの際に情報を持ち出せません。将来の選択肢を狭めることになります。
どの範囲のデータが、どの形式で書き出せるかを確認しておきましょう。
外部サービスとの連携
在庫管理、配信、分析、接客といったサービスとつながるかを確認します。連携できる一覧が公開されている製品もあります。
将来使いたいものが含まれているか、含まれていない場合は個別に開発できるかも確かめておきましょう。
広く使われている製品ほど、対応する外部サービスも充実する傾向があります。
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機能以外に比較すべきことは?
機能だけを見て選ぶと、運用の段階で困ります。
費用の構造
初期費用、月額、売上に対する手数料、追加機能の利用料を分けて把握します。基本料金だけを比較すると、実際の負担額を見誤ります。
決済代行の手数料や、外部サービスの利用料も別途発生します。
1件あたりの内訳を作っておくと、比較しやすくなります。
売上が伸びたときにいくらになるかも試算しておきましょう。固定費が高くても手数料がない形式のほうが、一定規模を超えると有利になる場合があります。
現在の売上と、1年後や3年後の想定の両方で計算しておくと、選択の妥当性を確認できます。
保守とセキュリティ
誰がシステムを更新するのかを確認します。事業者側が行う形式と、自社で対応する形式では、必要な体制が変わります。
自社で対応する形式を選ぶなら、更新を続けられる体制が前提になります。
更新を怠ったサイトが被害の対象になっている実態も報告されています。
セキュリティ対策が不十分なサイトは、被害の対象になります。基本的な対応がなされているかは、選定時に確認すべき項目です(参考:IPA「ECサイト構築・運用セキュリティガイドライン」)。
カード情報を自社で保持しない構成にできるかも、あわせて確認しておきましょう。
この構成にできるかどうかで、漏えいが起きた場合の影響範囲が変わります。
カード会社との契約にも関わる部分です。対応済みかを必ず確認しましょう。
サポートの体制
トラブルが起きたときに、どれだけ早く連絡が取れるかを確認します。決済や注文が止まれば、その間の売上は失われます。
繁忙期や時間外の対応がどうなるかも、確認しておく価値があります。
大型のセール期間に不具合が起きた場合の影響は、通常時とは比較になりません。
操作方法を調べられる資料が整っているか、利用者が多く情報を見つけやすいかも、日々の運用に影響します。
分からないことを自分で調べられる環境があると、問い合わせの手間も減ります。
担当者が変わった際の引き継ぎも、資料が整っていれば楽になります。
契約の条件
最低利用期間、解約時の費用、データを持ち出せるかを確認します。合わなかった場合に乗り換えられるかは、重要な観点です。
契約の途中で解約する場合の条件も、書面で確認しておきましょう。
数年単位で使うことになるため、この条件は軽視できません。
対応できる事業者の数
制作や運用を依頼する場合、その製品を扱える事業者が多いかも判断材料になります。依頼先を変更したくなったときに、探せる状態かという観点です。
特定の会社にしか扱えない状態は、将来の選択肢を狭めます。
比較はどう進める?
作業の順序を決めておくことで、判断できない状態を避けられます。
STEP1:要件を一覧にする
必須と希望に分けた要件を、表の形にまとめます。この一覧が、比較の軸になります。
STEP2:候補を絞る
必須の要件を満たすものだけを残します。この段階で3社程度まで絞るのが目安です。多くの候補を並べても、比較の精度は上がりません。
候補が絞れない場合は、必須の条件が緩すぎる可能性があります。
逆に、1社も残らない場合は条件が厳しすぎます。どちらの場合も、要件に戻って調整しましょう。
STEP3:同じ条件で見積もりを取る
自社の取引件数、商品点数、必要な機能を同じ形で伝えます。前提が揃っていなければ、金額を比べても意味がありません。
要件の一覧をそのまま渡し、対応の可否を回答してもらう形にすると比較しやすくなります。
できるという回答でも、標準の機能なのか個別の開発が必要なのかで、費用も期間も変わります。この点まで確認しましょう。
STEP4:実際の画面を確認する
資料だけでは、日々の作業がどれだけ楽になるかは分かりません。実際に業務を行う担当者に操作してもらうことが重要です。
決裁者だけが確認して決めると、現場で使われないという結果になりがちです。
試用の期間が設けられている製品であれば、実際のデータを入れて動かしてみるのが確実です。
STEP5:一覧に回答を並べる
各社の回答を要件の一覧に書き込み、横に並べて比較します。数字と事実が並べば、営業担当の説明に左右されずに判断できます。
この一覧は、社内で説明する際の資料としてもそのまま使えます。
判断の根拠が示せれば、合意も得やすくなります。
STEP6:判断して合意を取る
決定の理由を記録に残します。後から異論が出た際にも、判断の経緯を示せます。
選ばなかった候補と、その理由も残しておくと、後の見直しにも使えます。
数年後に再検討する際、当時の判断の前提を確認できます。
よくある失敗は?
選定でつまずく原因には、共通するものがあります。
機能の多さで選ぶ
使わない機能があっても費用は発生します。多機能な製品ほど設定項目も多く、使いこなせないまま複雑さだけが残るという結果にもなります。
必要な機能を満たしていれば、それ以上は求めなくて構いません。
シンプルな製品のほうが、現場で定着しやすいという面もあります。
要件を整理せずに提案を聞く
前提を示さないまま話を聞くと、各社が得意な分野に沿った提案になります。比較の前提が揃わず、判断できません。
聞くほど分からなくなるという状態は、この原因で起きています。
現場を巻き込まない
日々操作するのは現場の担当者です。使いにくいという理由で運用が回らなければ、どれだけ機能があっても意味がありません。
導入後に不満が噴出するという事態も、この段階で防げます。
将来を見越しすぎる
いつか必要になるかもしれない機能をすべて求めると、費用も規模も膨らみます。現時点で確実に必要なものを満たすことを優先しましょう。
必要になった時点で追加できるか、乗り換えられるかを確認しておけば十分です。
拡張の余地があるかを確認する程度にとどめましょう。
乗り換えの負担を軽く見る
既存のサイトから移行する場合、データの移行に手間がかかります。特に定期購入の決済情報やレビューは、引き継げないことがあります。
移行できる範囲は、選定の段階で書面にしてもらいましょう。口頭の確認では、後から認識の違いが生じます。
移行にかかる期間と作業量も、選定の段階で確認しておきましょう。
まとめ
カートシステムの比較は、要件を整理するところから始まります。必須と希望を分け、現場の担当者に確認し、現在の課題を数値で押さえてから候補を絞りましょう。
確認すべき機能は、商品と在庫、購入手続き、決済、顧客管理、販促、デザイン、分析、外部連携の8つの分野に整理できます。あわせて、費用の構造、保守とセキュリティ、サポート、契約の条件も比較の対象です。
進め方は、要件を一覧にし、必須で候補を絞り、同じ条件で見積もりを取り、実際の画面を現場に操作してもらうという順序です。機能の多さではなく、自社が必要とする範囲を満たし、現場が扱えるかで判断してください。
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