「ECサイトの売上は伸びているが利益につながらず悩んでいる」
「自社の利益率が適切な数値かどうか分からず不安」
「ECの利益率を向上させる具体的な方法を知りたい」
EC事業における利益率について、上記のような悩みや課題を持っている方がいらっしゃるのではないでしょうか。ECにおいて業績を上げるためには、商品の売上を伸ばすだけでなく、適切な利益率を維持する必要があります。利益率が低いと十分な収益を得られず、赤字になるリスクが上がるため注意が必要です。
本記事では、EC事業において重視すべき利益率の種類や改善方法を解説します。自社ECにおける利益率を向上させ業績アップにつなげたいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
自社ECサイトの運営で必須な7つのチェックリスト
無料で資料を受け取る
Contents
ECにおいて重視される2つの利益率
「利益」とは売上高から諸経費を差し引いた数値であり、事業における儲けそのものを意味します。そして「利益率」は売上高に対する収益の割合を指しており、企業の経営状況を把握するために重要な要素です。
EC事業において、利益率は商品の販売を通して儲けを得られているかを判断する指標として重視されています。売上が伸びていても利益率が低い場合、採算が合わずに赤字となるリスクがあるため早期の改善が必要です。
利益は意味や役割によって5つに分類されており、以下の種類があります。
- 粗利益
- 営業利益
- 経常利益
- 税引前当期純利益
- 当期純利益
ECの運営において重視されるのは「粗利益」と「営業利益」であり、これらの割合によって経営状況が判断可能です。自社の経営状況を把握するために、それぞれの利益率の意味や役割を正確に理解しましょう。
1. 粗利益率
「粗利益」とは売上高から仕入れや製造にかかる原価を引いた数値であり、商品の価格設定や販売数が妥当であるかの判断材料となります。「粗利益率」とは売上高に対して原価を除いた収益の割合で、算出方法は以下のとおりです。
- 粗利益率=(売上高-原価)÷売上高×100
粗利益率は市場ニーズや競合との競争力など、商品設定における戦略の是非を判断する基準となります。粗利益率は業種や扱う商材によって異なっており、各分野における粗利益率は以下のとおりです。
- 卸売業:15.9%
- 製造業:21.9%
- 小売業:30.4%
- 情報通信業:47.4%
自社で製造を行う企業や差別化された商品を扱う会社では、粗利益率が高くなる傾向にあります。ECにおける具体的な粗利益率のデータはありませんが、アパレルを扱うネットショップでは50%を超える粗利益率です。
参照:総務省|中小企業実態基本調査 令和4年確報
2. 営業利益率
「営業利益」とは、売上高から原価と「販促費および一般管理費」を引いた数値です。販促費は広告費や配送料などが該当し、月ごとに大きく変動しやすい特徴があります。一般管理費は売上へ間接的に影響しているコストで、商品やサービスの生産・販売に関わらない人件費や通信費などの固定費です。
「営業利益率」は売上高に対して事業のランニングコストを除いた収益の割合で、以下のように算出されます。
- 営業利益率=(売上高-原価-販促費および一般管理費)÷売上高×100
営業利益率は総合的な収益性を判断する基準となるため、経営状況を把握するために重要です。
EC事業におけるランニングコストについては、関連記事の「ECサイトにかかるランニングコストの維持費・運営費について解説!費用を抑える3つの方法も紹介」にて詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
ECにおける営業利益率の目安は20%前後
EC事業における営業利益率は、20%前後が理想値と言われています。ECサイトの運営に関する指標としては「3・3・4の法則」や「1・5・4の法則」が有名です。
これら2つの法則では「商品の原価:販促費:その他経費や営業利益」を「3:3:4」や「1:5:4」の比率に収めるのが望ましいとされています。どちらの法則においても、その他経費と営業利益はそれぞれ20%ずつが理想値です。
実際のEC業界では、営業利益率が5〜10%程度の企業が最も多く、理想値の20%を超えている事業者は1.5割ほどしかありません。営業利益率が20%を下回っているEC事業者が業績を伸ばすには、利益率を改善する施策に取り組み続けることが重要です。
参照:流通情報|大手総合ECサイト利用事業者の状況調査 2022
【商品設定】ECの利益率を向上させる3つの施策
業績を伸ばすには「粗利益率自体を増やすか」「営業利益率を向上させるか」の2種類のアプローチがあります。ECにおいて粗利益率を増やすためには、商品設定の見直しが有効です。
ここでは、商品設定の改善によって粗利益を増やしつつ、売上高を伸ばす3つの戦略を紹介します。自社ECで扱う商品や価格設定を見直し、粗利益率アップを狙いましょう。
1. ラインナップを見直す
商品のラインナップを見直し、粗利益率の高いアイテムを扱いましょう。仕入れや製造のコストが低く高価格で販売できる商品ほど、粗利益率が高くなる傾向にあります。ECと相性の良い商品のうち、粗利益率の高いアイテムの例は以下のとおりです。
- ギフト用アイテム
- オリジナル商品
- デジタルコンテンツ
ラインナップを見直す際は市場や競合の分析を入念に行い、ニーズのある商品を取り入れることで売上アップにつながります。ニッチな商品や独自開発のオリジナルアイテムは競合と差別化でき、一定の売上を確保しやすいでしょう。
粗利益率の高い商品や市場のニーズは変動するため、定期的に調査してラインナップを見直すのがおすすめです。
2. 単価を上げる
ECで現在扱っているアイテムの粗利益率を高めるには、商品の価格や顧客単価を上げる施策を行います。一方で商品の値段を上げれば粗利益は増えますが、価格改定によって顧客離れのリスクがあるため適切な対策が必要です。
値上げする際は、競合との差別化の徹底やアフターサービスを充実させ、顧客離れを防ぎましょう。粗利益率の低い商品がある場合は収益性の高いアイテムとセットで販売し、儲けを確保しつつ顧客単価を上げる戦略がおすすめです。
また定期購入サービスを導入すれば、LTV(顧客生涯価値)の向上につながります。初回はキャンペーン価格であっても、定期購入の2〜3回目ほどで割引額や販促費などのコストを回収できる単価に設定していれば、自動的な利益の積み重ねが可能です。
LTVを向上させる方法については、関連記事の「ECにおけるLTVの計算方法と数値改善のための3つの施策を解説」にて詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
3. 原価を抑える
商品の原価を抑えてコストを減らす施策を行い、粗利益を確保しましょう。自社やOEMで独自の商品を生産している場合は、製造のコストカットにより原価を抑えられます。製造におけるコストを削減する代表的な方法は、以下のとおりです。
- 原料を見直して材料費を削減
- 製造ラインを集約して工数を削減
- 在庫管理を徹底し適切な数量を製造
小売のEC事業の場合は、仕入れ先の見直しにより原価を抑えられる可能性があります。「複数の仕入れ先から相見積もりを取って価格交渉を行う」「メーカーから直接買い付ける」などの方法により、商品の調達にかかる原価の削減が可能です。
仕入れ先の状況は市場の影響を受けて変動するため、定期的に見積もりを取って原価を抑えられる取引先を選定しましょう。
【コストカット】ECの利益率を向上させる4つの施策
業績を伸ばすもう1つの戦略として、営業利益率を向上させるアプローチがあります。EC事業において営業利益率を改善するには、運営にかかる費用のコストカットに加えて業務の効率化を図りましょう。
ここでは、EC運営におけるコストを削減し業務の効率を高める4つの施策を紹介します。自社の経営に影響する無駄を省き、営業利益率アップを狙いましょう。
1. 広告費を削減する
広告費を削減しつつ効率的に売上へつながる施策を行い、営業利益率を伸ばしましょう。例えばECへの集客にSNSを活用すれば、広告費を抑えられる可能性があります。
Web広告に比べてSNS広告の出稿費用は安い傾向にあるうえ、拡散性が高いため効率的に集客が可能です。アカウントは無料で開設でき、SNSを用いてブランディングをすれば競合との差別化につながります。
また新規顧客にアプローチするよりもリピーターの獲得へ注力する方が、限られた広告費でも売上アップが可能です。リピーターを獲得する施策としては、以下の方法が挙げられます。
- メルマガ配信
- ポイント制の導入
- リピーター用クーポンの配布
- 定期的なキャンペーンの実施
SNSを用いた集客方法については、関連記事の「ECサイトの集客に効果的な5つのSNS運用方法!具体的なメリットと注意点も解説」にて詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
2. 配送費用を見直す
配送に関わる費用を見直し、余分なコストを削減しましょう。商品の価格に対して配送費用の割合が大きいケースでは、ユーザーが送料を払う規定にするか、購入額が一定以上の場合のみ自社負担にすると負担が軽減できます。
ただし、ユーザーが送料を払うように設定されている場合、顧客はそのECでの購入を控えるケースがあるため、売上自体が落ちないよう慎重に判断しましょう。
一方で配送費用は、大きさと重量で設定されている場合が多いため、梱包を小型化するとコスト削減につながります。ダンボールはできるだけ小さいサイズにし、緩衝材は必要最低限の量に留めましょう。
また毎月一定数以上の商品を発送する場合は、配送業者と法人契約を結ぶことで送料が割引されるケースがあります。
3. システムを最適化する
各種システムを見直し、自社の状況に合わせて最適なサービスを選ぶことで余分なコストの削減が可能です。ECの運営に欠かせないカートシステムや決済サービスは、契約プランや売上に応じて一定の手数料が発生します。
手数料は利用するカートシステムによって異なり、数%の差であっても売上高に応じてコストは大きくなるため、定期的に見直すのがおすすめです。自社ECの現時点での事業規模を考慮して、必要な機能が備わっているカートシステムを複数ピックアップし費用を比較検討しましょう。
各種システムを見直す際は、費用面だけでなくセキュリティやサポート内容を加味することが重要です。カートシステムの選び方については、関連記事の「カート機能とは?ECカートシステムを選ぶ際のポイントや有料版と無料版の機能の違いも解説」にて詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
4. 業務を効率化する
ツールの導入や外部委託などを積極的に行い、EC運営における業務の効率化を図りましょう。業務を効率化すれば人件費の削減はもちろん、社内のリソースを別の業務で活用可能です。
「チャットボットの導入」や「カスタマーサポートの外部委託」などにより問い合わせ対応を効率化すれば、顧客満足度を維持しつつ人件費を抑えられます。また発送業務を外部委託すれば、梱包作業や在庫管理にかかる人件費だけでなく、倉庫までの配送料やスペースの維持費などのコストカットが可能です。
ほかには受注管理システムを導入し、注文への対応を自動化する方法があります。受注管理システムは注文への対応における人的なミスを軽減するうえ、ユーザーに商品が届くまでのリードタイムの短縮につながり顧客満足度の向上が可能です。
業務を効率化するその他の方法については、関連記事の「ECの問い合わせ対応を効率化する5つの手法!課題ごとに適切な対処方法を解説」にて詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
ECにおける利益率の最適化ならFORCE-R
EC事業において利益率を向上させる方法は複数あり、扱う商品や業種などによって効果的な施策は異なります。粗利益率は市場の動向によって大きく変動する可能性があるため、改善するためにはトレンドや競合の把握が重要です。
営業利益率を最適化するには、販促費や一般管理費への影響が大きいコストを分析し、大幅な経費削減が見込める分野から着手すると良いでしょう。自社ECの利益率を向上させる施策にお悩みの方は、ぜひFORCE-Rへお問い合わせください。
経験豊富な専門コンサルタントがクライアント様と密に連携を取り、利益率を向上させる施策の立案やサポートを行います。
まとめ|ECの利益率を改善するには経費の可視化が重要
EC事業における利益率を改善するためには、売上高に対する商品の原価や販促費などのコストの可視化が重要です。可視化したコストの内訳をもとに、自社ECの運営において利益の伸びを妨げる要因を明確化し、適切な施策に取り組み収益性を改善する必要があります。
FORCE-Rでは専門コンサルタントが利益率における課題を発見した上で、効果的な改善策の立案を行います。自社ECの運営における余分なコストを削減し利益を伸ばしたい方は、ぜひFORCE-Rへお問い合わせください。